トラストバンクが2023年から本格開始した新規事業「休眠預金活用事業」。本事業部のメンバーは、休眠預金を主な財源として、事業者さんが考える「地域の課題解決」と「持続可能な収益性」を同時に叶えられるソーシャルビジネスを、実行に至るまで併走しています。
★休眠預金活用事業に関する最新のプレスリリースはこちら
この、TBbaseの期間限定特別連載「有希子のPO(ピーオー)日記」では、そんな「休眠預金活用事業」に携わる「プログラムオフィサー(PO)」の普段のお仕事内容や、採択された事業者さんのプロジェクト進捗などを現場からお届けします!
こんにちは!休眠預金活用事業/ソーシャルイノベーションデザイン室の有希子です。
ついこの間まで寒い寒いと言っていたのですが、少しずつ春の陽気になってきましたね。
この時期に気になってくるのは花粉症ですが、皆さんは大丈夫ですか?
私は花粉症はまだ発症していないはずなのですが、鼻がグスグスしています。
(「花粉症かも…」とあまり考えないようにしています。)
さて、今回のPO日記は、小規模な都市近郊農家と就労困難者の課題解決に繋げるため、新しい農福連携の形を目指し事業を推進する一般社団法人ビーンズさんのお取り組みをご紹介したいと思います!
<一般社団法人ビーンズさんについて>
一般社団法人ビーンズさんは、障がいと向き合う方など、困難を抱える方を支援する目的で2016年に設立された団体さんです。「常に取り残される側の目線に立ち、今の時代に必要とされる生きるための選択肢を福祉によりつくり続ける」ことを理念に掲げ、現在は約240名ほどの障がい当事者の方をはじめ困難を抱える方々の支援を行っています。
ビーンズさんの運営されている施設の一つに、2018年に千代田区と協同で設立された就労支援施設(就労継続支援B型)「ソーシャルグッドロースターズ」があります。ここは本当に美味しいコーヒーやスイーツを楽しめるおしゃれなカフェですが、最大の特徴が、ここで働くバリスタや焙煎士をはじめスタッフの方々は、障がい当事者の方々である、ということです。(障がい当事者の方々のサポートをされるスタッフさんも勤務されています)
私も何度かお邪魔して美味しいコーヒーをいただきましたが、皆さん、焙煎、製造、接客等のプロとして勤務されています。他意なくはっきり言ってしまうと「スタッフさんが障がい当事者であることを忘れる」空間で、初めて訪問した際は「こんな働き方があるんだ」と衝撃を受けました。
ビーンズさんは、障がい当事者の方々がそれぞれお持ちの特性や興味を活かし、業務を細分化し、育成を通じて、その道の「プロ」として経験を重ねることができるノウハウと実績を積み重ねられています。
そして、ソーシャルグッドロースターズの新店舗が、3/21(木)JR上野駅構内にOPENとなりましたので、千代田区の店舗はもちろん、こちらにもぜひ足を運んでみてください!
★詳しくはこちら:https://sgroasters.jp/?p=1643
<農家の未利用食材を活用した「餃子」で、新しい活躍の場をつくる>
ビーンズさんが考える受益者(事業を通して課題を解決する対象)は、「障がい当事者をはじめとした就労困難者」で一貫されているのですが、今回、休眠預金活用事業では、「小規模な都市近郊農家」にも目を向け、新しい事業を推進されます!
代表の坂野さんは、これまで進めてきた事業の繋がりを経て、神奈川県の都市近郊農家の現状を知ったと言います。
「神奈川県は都市近郊型であるため農業の大規模化が困難であり、現在77件ある内の98%が従業員5名以下の家族経営の小規模農家。こうした小規模農家の多くが、後継者の不在、人手不足にという課題に常に直面しています」
このような「農業」分野と、「福祉」分野を組み合わせ、障がい当事者の方々が農業分野での活躍を通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく「農福連携」の取り組みは、現在も地域に多くあります。
しかし、坂野さんは、「従来の農福連携では障がい者ら就労困難者が、一次産業に従事するものが一般的でした。しかし、就労困難者の多くが、”専門的な技能を身につけたり人と関わる仕事をしたい”というニーズを持っており、一次産業である農業を望まない傾向があります。また小規模農家の方でも、”人を雇用する余裕がない”、”教えても辞めてしまう”などの課題があり、就労者と事業者の間のミスマッチが発生していることから農福連携での就労数は伸び悩んでいます」と、現状の農福連携の取り組みにおける課題を挙げられています。
そこでビーンズさんが進めていくのが、まさに「新しい農福連携」。小規模都市近郊農家で、利益に繋がらず廃棄同然の扱いになっている未利用食材(豚肉の腕肉など)を活用し、スペシャルに美味しい「餃子」を開発。その餃子を提供する店舗を開設し、そこで就労困難者の方を食肉加工・餃子作りのプロとして育成し、採用していく事業です。
実は、当初坂野さんは、未利用食材を活用して開発する商品を「餃子」ではなく「ソーセージ」にしようと考えていらっしゃいました。しかし、坂野さんで市場調査をしたところ、豚肉を使用する商品では、「餃子」がマーケットが大きくかつ設備投資も少なく参入ができることがわかり、「餃子」に方向転換をされた背景があります。
ビーンズさんのこの取り組みに賛同した小規模都市近郊農家が、神奈川県藤沢市で畜産業を営む「株式会社みやじ豚」さんです。
自然豊かな湘南で、少頭数を丁寧にこだわりを持って育てているみやじ豚さんの豚肉は、料理人や飲食店も注目する美味しさです。
ただ、家族経営であり、今後の人手不足を見据えて事業を拡大していきたい想いはあるものの、商品開発やブランディングなどを行う人員がいなかったと言います。
「この取り組みは、これまで廃棄同然で扱っていた腕肉やもも肉を、美味しい餃子に加工し、さらに新しいお客様にみやじ豚の美味しさを知ってもらえる可能性が広がる。小規模都市近郊農家にとっても、ワクワクする大きな可能性を感じる取り組みです」とみやじ豚代表の宮治さんは話されています。
この未利用食材を活用した餃子を開発するにあたり、坂野さんは餃子を提供するあらゆる店舗に訪問し、美味しい餃子を研究されました。実は、坂野さんは飲食店の運営やレシピ開発は未経験。しかし、周囲が驚くほど綿密に市場を調査し、試作を重ねられてきました。
そして、究極に美味しい餃子のレシピを企画・開発を進めるともに、就労困難者の方でもこのレシピをスムーズに製造でき、また現場で作業ができるよう、様々な機器の準備を進めています。
私も餃子レシピの開発・試食会にお伺いをしましたが、「こんな餃子ははじめてです」と思わず言ってしまうほど、お肉のあふれる旨みを感じる餃子でした。
「この美味しさは、みやじ豚さんのお肉が未利用食材であったとしても断然品質がいいからこそ生まれるものです。みやじ豚さんのお肉の美味しさをこの餃子でじっくり堪能してほしいです」と坂野さんは話されています。
そして、この新しい農福連携の取り組みについて坂野さんは、「いずれ小規模都市近郊農家さんで事業推進ができるようにしていきたい。そのために、この事業でまずはビーンズが就労困難者を雇用した店舗を運営して実績を作り、小規模都市近郊農家さんによってこの新しい農福連携の取り組みを発展していってもらえるようにしたい」と今後の展望もお持ちです。
ビーンズさんは、トラストバンクとの契約開始から半年以上、受益者の課題整理と事業設計を進めながら、店舗の準備を行ってきました。そしてついに!新しい農福連携を体現すると同時にスペシャルな餃子を楽しめる店舗が、2024年4月26日(金)東京都杉並区の方南町にOPENすることが決まりました!
ぜひ皆さん、未利用食材を活用しこだわり抜いた美味しい餃子を味わいに、方南町の店舗へ遊びに来てください!
トラストバンクも、引き続きしっかり伴走支援をさせていただきます!
ここまでお付き合いいただいたPO日記ですが、次回がいよいよ最終回となります。(涙)
次回は、誰もが活き活きと希望を持って働ける社会を目指し、事業を推進されている事業者さんのお取り組みをアツくお伝えできたらと思っています!
ではでは、次回もどうぞよろしくお願いいたします!