2023.12.27

<有希子のPO日記③>事業伴走の現場から / 御祓川が大切にする能登の地産品事業者の声

トラストバンクが2023年から本格開始した新規事業「休眠預金活用事業」。本事業部のメンバーは、休眠預金を主な財源として、事業者さんが考える「地域の課題解決」と「持続可能な収益性」を同時に叶えられるソーシャルビジネスを、実行に至るまで併走しています。

★休眠預金活用事業に関する最新のプレスリリースはこちら
https://www.trustbank.co.jp/newsroom/newsrelease/press623/

この、TBbaseの期間限定特別連載「有希子のPO(ピーオー)日記」では、そんな「休眠預金活用事業」に携わる「プログラムオフィサー(PO)」の普段のお仕事内容や、採択された事業者さんのプロジェクト進捗などを現場からお届けします!

年末、元気にお届けいたします!

第3回活動紹介 | 御祓川が大切にする能登の地産品事業者の声

こんにちは!休眠預金活用事業/ソーシャルイノベーションデザイン室の有希子です。
つい最近2023年が始まったと思ったら…もう年末ですね。(この感覚は私だけでしょうか…?)
年末年始、私は久しぶりに地元である秋田にゆっくり帰省する予定です。

「地元」と言うと、皆さんにも思い浮かべる地域があると思いますが、今回は、能登の地産品事業者の皆さんに寄り添い、事業継続のためのサポートや事業を、地元密着で進行されている
「株式会社御祓川(みそぎがわ)」さんにお伺いした際のレポートをお届けしたいと思います!

<株式会社御祓川さんについて>

株式会社御祓川さんは、石川県七尾市において、市民による港を中心としたまちづくり運動を母体とし1999年6月に設立されました。2007年の能登半島地震を契機に能登全体に事業を展開されています。
社名にある”御祓川”(みそぎがわ)とは、七尾市の中心市街地を東西に分ける川のことで、七尾市民の様々な生活シーンで流れ続けています。
御祓川さんは、「持続可能な社会づくりのためのまち・みせ・ひとの活性化」を団体目的に掲げ、地元企業を対象とする地域外人材の採用支援(能登の人事部)、自社ECサイトを通じた能登産品の販路拡大(能登スタイルストア)、まちづくりを担う人材を育成する講座提供(御祓川大学)等を行っており、能登の未来に向けて地元密着で活動されています。

一番手前・向かって右側の方が、株式会社御祓川代表の森山さん。一番手前・向かって左側の方が、事業担当者の酒井さんです。森山さんの隣の男性が「中島アグリサービス」の松田さんです。(これから本文にご登場されます!)能登にお伺いした際はちょうど地元のお祭りの日で、「ヨバレ」(祭りの日に親戚や友人等を招いて、ごちそうでもてなす習慣)に呼んでいただいた際の写真です。(青空の下、「ごっつぉ」(能登の方言で”ごちそう”)をいただくのは最高でした…!)

<御祓川さんの地産品事業者に対する「想い」>

能登地域では、日本海に突き出した丘陵上の半島という地形的条件も関係し、山では山菜やきのこを採り、田んぼでは米を作り、海では様々な漁法で魚を獲るなど、里山里海の多様な生態系の恵みを享受しながら、人々の暮らしが営まれてきました。里山と里海は密接に関係しており、各自の生業が組み合わされることによって、能登の地域全体で生計が維持されていると同時に里山里海の環境も維持されてきています。
この里山里海を中心とした農林水産システムは、能登の文化・信仰にも大きな影響を及ぼしており、この「能登独自の農林水産×文化・信仰のシステム」は、国内外において先駆的かつ特異的な残すべき財産とされ、2011年に世界農業遺産(GIAHS)にも認定されました。

出展:世界農業遺産「能登の里山里海」情報ポータル/能登地域の農林水産業システム イメージ図。里山里海をめぐる様々な生業が密接に関係し、人々の暮らしが形成されていることがわかります。

代表の森山さんは「私たちの中心にいるのは、常に能登の事業者さんです」といつも話してくださります。その言葉通り、御祓川さんは常にこのシステムの中心的な担い手である「地産品事業者」さんを「受益者(事業を通して課題を解決する対象)」として様々な事業を進めています。
また、事業担当者の酒井さんは、能登出身?と思いきや、実は東京生まれ・東京育ち。御祓川で行っていた研修参加のため能登を訪れた際、「宿泊先の家(一軒家)でカギが渡されない」「近所の農家さんや事業者さんからどんどんおすそ分けをいただく」「初対面でも地域の飲み会に誘われる」などの体験をされ、衝撃を受けたそうです。「お金で買えない価値がここにはある。このような能登の暮らしや生業を守りたい」という想いで御祓川に参画されていて、本当にアツい想いをお持ちの方です。(現在は東京⇔能登の往復生活をされています!)


<「地産品事業者」さんの声>

今回御祓川さんにお伺いした最大の目的は、「受益者(事業を通して課題を解決する対象)である地産品事業者さんの声を直接お伺いする」ためでした。
御祓川さんから、能登の地産品事業者の現状や取り巻く根本的な課題などをお伺いしていましたが、「今の私は、表面的な部分でしか課題を捉えられていないのではないか」と思い至ったからです。森山さんや酒井さんと同じ目線になることは難しいかもしれませんが、少しでも近づいた上で、一緒に事業を推進していきたい、と思い、弾丸でお伺いをさせていただきました。


最初にお伺いしたのは、穴水町で「かぶと味噌」を造られている高尾商店さん。

向かって左より、高尾商店代表の高尾良雄さんと奥さま。お二人とも素敵な笑顔が印象的でした。

代々麹屋を営んでおり、約40年程前から味噌づくりを始めたそうです。
麹屋ならではのこだわりの麹と、自家製のお米、そして富山もしくは石川県内の大豆を使用しており、素材にとことんこだわって味噌づくりをされています。
現在の販路は御祓川さんで運営している「能登スタイルストア」や直販、そして卸の3つがありますが、卸がメインとなっていて、販売単価がなかなか上がらない現状があると話されていました。

どの商品も品質・美味しさともに間違いなし!ただ、その美味しさやこだわり、品質を外部に向けて発信ができていない現状がありました。


次にお話をお伺いしたのは、「中島アグリサービス」の松田さん。
七尾市で「安心しておいしく食べられる農作物を安価で消費者に届ける」をモットーに、地元伝統野菜の「中島菜」や野菜、お米を作ると同時に、麺類や粉末など農作物を加工した商品開発も行っています。
松田さんの商品開発のアイディアはお伺いしていてワクワクするものばかりでした。

この日は、松田さんの「ヨバレ」に呼んでいただきました。

「地域内のニーズと地域外のニーズが全然違うことを痛感している。外でなかなか売れない」、「良いもの・面白いものを事業者個々で作っているが、個々の力が弱いため発信ができていない」、「加工を地域内でお願いしたくともなかなかかなわず、地域外に加工をお願いしている」など、商品開発を積極的に行っている松田さんだからこそ、日々実感しているお話をお伺いしました。

その他、御祓川さんの地元の流通事業者さんへの商談にも同行させていただき、その中で地元の流通事業者だから把握できる地産品事業者さんの現状や課題についても、お伺いすることができました。


<能登地域固有の価値を残すために~御祓川さんの取り組み>

今回の訪問を通じ、いつも御祓川さんからご共有いただいていた地産品事業者さんの現状や課題そしてその大きな魅力について、腹落ちする場面が何度もありました。
商品企画、マーケティング、販路、組織づくり、後継者の育成…一言で言ってもこんなに多くの問題が上がる中で、その一つ一つの中にも、地産品事業者さんの現状によって抱える問題が異なり、さらに絡み合っていると感じました。
そして、能登の里山里海の自然環境と「能登独自の農林水産×文化・進行のシステム」を守り、更新していくために、地産品事業者さんの溢れる魅力を引き出すと同時に、抱えている課題を解決していくーーー持続可能な経営状態になることが必要だと改めて感じました。

そのための大きな一歩として、御祓川さんは、「地産品事業者さんへの『商品企画』『マーケティング』支援」事業を行っていきます。そして、この地産品事業者さんと一緒に確立するプロジェクトを通じて、地産品事業者さんに成功体験を持ってほしい、次世代に繋げてほしい、という強い想いから生まれた事業です。

地域内で「残したい」と思っている文化や伝統、産業は、(乱暴な言い方ですが)外部の人間から見ると「なぜ残さないといけないのか」が理解しづらい場合が多くあると思います。
御祓川さんの事業に伴走させていただくことにより、能登の里山里海の自然環境と「能登独自の農林水産×文化・進行のシステム」の価値、そしてそれを更新しながら守ろうと奮闘されている御祓川さんの事業の価値を最大限に外部へ伝えていけるよう、誰もがわかるように課題を明文化し、社会的インパクト評価をしっかり行っていきたいと改めて感じました。

御祓川さんの事業を通じて、地産品事業者さんの変化がどのようにして生まれていくのかーー、引き続きご注目いただければ嬉しいです。

そして御祓川の皆さま、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

次回も、事業者さんを訪問した際のお打ち合わせ内容について、アツくお伝えできたらと思っています!
ではでは、素敵な年末年始をお過ごしください。
来年もどうぞよろしくお願いいたします!

<プログラムオフィサー連載記事>
有希子のPO日記①
有希子のPO日記②
有希子のPO日記④
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