2022.06.01

電気はどこから来ている?「三方良し」のお礼の電力が問いかける電気「地産」の価値

2021年11月15日に群馬県中之条町が再開したお礼の品「お礼の電力」。
https://www.trustbank.co.jp/newsroom/newsrelease/press473/
前回は中之条町、株式会社中之条パワーの担当者の方々にお話をお礼の電力実施の背景やお礼の電力が実現することについてお伝えしました。
地域とともに歩む持続可能なまちづくり ~ 群馬県中之条町の「お礼の電力」に込められた想い ~
今回は株式会社V-Power代表取締役の小室正則さんにお礼の電力がどのように中之条町に貢献し、お礼の電力実施にはどのような思いが込められているのか、お話をお伺いしました。

目次

|「お礼の電力」が生まれるまで
|「お礼の電力」再開!その背景は?
|「三方良し」の仕組み

|「お礼の電力」が生まれるまで

ーどのような経緯があって「お礼の電力」を開始されたのですか?

小室:大きく二つあります。まず、地域新電力会社は地域に役立たなければならないと考えています。中之条町を活性化させるためという役割が株式会社中之条パワーにはあるはずです。ふるさと納税と地域新電力会社の役割には共通点が多く親和性が高いと感じました。また、地域新電力の事業モデルを採択しようとすると、どうしても一定の契約数が必要になります。一方で中之条町の人口はそこまで多くありません。そこで首都圏からの応援を募るという意味合いでふるさと納税制度を活用できると考えました。

ー実際に「お礼の電力」開始にあたり中之条町や中之条パワーとどのような議論を重ねてきたのですか?

小室:エネルギーの地産地消を軸に掲げたビジネススキームの中で、寄付者に電力を供給するのはある意味で目的に反する部分があります。どのようにして整合性をとるかといったところが問題でした。中之条町は豊富な再エネ資源がありながらも事業規模が小さいので余剰電力がどうしても発生していました。発生する余剰分を首都圏の方々にも利用していただく。最大限エネルギーの地産地消は達成しつつ、余剰分を「お礼の電力」として活用する、といった形ならば理解が得られると思いました。エネルギーの地産地消を目指すという目的の下、今まで地域外に流出していた中之条町で発電した電力を地域内で契約していただく、というのが地域新電力の役割です。しかし「お礼の電力」は契約の地域外からの流入を増やすという180度ベクトルが変わる話です。地域循環型経済を大きくするためにも「お礼の電力」は必要である、という点で理解を得られたと考えています。

|「お礼の電力」再開!その背景は?

ー2021年11月26日に「お礼の電力」が再開されました。「お礼の電力」再開の条件であった非化石証書の準備によって再開前の「お礼の電力」と変わる部分はありますか?

小室:今までであれば「お礼の電力」を中之条町の電気としてお客様に販売すればするだけのものでした。そこで産地価値を証明する必要があるということでトラッキング付き非化石証書が必要になったので実務上少し手間が発生しました。しかし、非化石証書を付けることで中之条町の、再生可能エネルギーによる電力を供給するということが公的に証明できるようになりました。

*非化石証書とは?
地産電源による環境価値を証明する証書。
総務省は「お礼の電力」を「地場産品」として認める基準として「1.地域資源を活用し、 区域内で発電された電気であること」「2.電力の小売供給契約において区域内で発電されたことが明示できること」を再開するための条件としました。その 条件達成の証明として求められているのが産地を明示できる契約根拠および非化石証書です。

ー現在、「お礼の電力」の受付数を50件に限定しているのは何か理由があるのですか?
小室:「お礼の電力」は地域に供給する電力の余剰分を利用しています。契約数が増加し、余剰分を上回ることのないよう、50口に限定していますが、地域内での地産地消が十分でなければ引き続き地域外の方への応援を募っていく可能性もあるのかなと思います。

|「三方良し」の仕組み

ー「低炭素社会と経済成長の両立」というV-Powerの理念に「お礼の電力」はどのように関わっているのでしょうか?

小室:「お礼の電力」に限った話ではないですが、地域循環型経済を掲げる活動はマネタイズに限界がある部分もあります。そこでマイクログリッドなど様々な新たにお金を生み出す仕組みを提案してきました。その仕組みの一つが「お礼の電力」です。再生可能エネルギーを活用して地域の活動に貢献するなどの取り組みはその活動単体では成り立たないことがある。こうした取り組みのレジリエンス(しなやかさ、安定さ)を維持するためにもこれからも様々なイノベーションを起こす必要がある、そのように考えています。
また、そもそも地域内でのエネルギー循環を目指す地域新電力は市場の規模が小さく安定して事業を行うのが難しいという共通の課題を抱えています。「お礼の電力」は、寄付者も納税を通じて環境に優しいクリーンな電力を安価に利用することができ、自治体である中之条町も地場産品が増え、自治体を応援してくれる人が増える、また地域新電力である中之条パワーも契約いただくお客様が増え、事業の安定性を維持できるという「三方良し」の仕組みなんです。このようにサステナブルに小さな地域新電力会社を育てていく、という意味でも非常に効果が高いと考えています。

ー寄付者は「お礼の電力」のどのような点に魅力を感じ寄付を行うのだとお考えですか?

小室:寄付を考える方がお礼の品に魅力を感じ寄付をするのであれば、肉や魚など日常生活の必需品から選択をするのではないでしょうか。私の場合は生活必需品がビールなのでビールということになりますが(笑)。電力も日常生活に欠かせない必需品です。しかもその電力は中之条の豊かな自然を活かし再生可能エネルギーによって発電された環境に優しい電力。そうしたクリーンな電力を日常生活でお得に利用できる、その点に魅力を感じていただけていると思います。

ーお米やビールなどは地場産品としてすぐに思いつきますが、電力が地場産品なんだ、という発想はどのようにして思いついたのですか?

小室:一般の方々だと電気がどこで発電されているのかあまり意識されてこなかったかもしれません。昔から大きな水力発電所があった群馬県、長野県、新潟県などでは、発電所を建設するために地域やそこに住む住民の方々が非常に大きな犠牲を強いられていました。そうして発電された電力を利用する首都圏の方と負担が大きい地域の方々が同じ電気料金であるというのは不自然でしかなかった。そこに気づいてほしいという思いもあり、電力も他の生活必需品と同じように「地産」をもっと強く訴えるべきだと思いました。
 地方創生や過疎化が言われる中でエネルギーがどこから来ているのかという部分に目が向き、「お礼の電力」がもっと広まれば地方の見方が企業から見ても変わるのではないでしょうか。それによって企業が地方に集まり、雇用が生まれ、暮らしやすい広々とした土地で人々が暮らす。どれをとっても幸せな未来のように私は感じます。

群馬県中之条町の「お礼の電力」はこちらからお申込みいただけます。
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/10421/668224



トラストバンクは寄付者の方、全国の自治体や事業者とともに地域の価値を創る「地域共創」を目指しています。今後もこうした持続可能な地域づくりのための取り組みを応援していきます。

(取材執筆=コーポレートコミュニケーション部インターン・井出凛太郎)

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