2021.04.22

「えねちょ」が「新エネ大賞」を受賞 卒FIT電力に“地域貢献”の付加価値

きょう4月22日は、一人ひとりが地球環境について考える「アースデー」。トラストバンクも、太陽光発電や風力発電による地域の再生可能エネルギーの活用を進めています。

なかでも、住宅太陽光の「卒FIT電力*」を地域に寄付できる業界初のプラットフォーム「ふるさとエネルギーチョイス えねちょ」は、新エネルギーの先導的な事例を表彰する「2020年度新エネ大賞」(主催・新エネルギー財団)で「資源エネルギー庁長官賞・地域共生部門」を受賞しました。

「ふるさと納税の会社が、どうしてエネルギー?」と思う人もいるかもしれません。

実は、エネルギーコストは地域外への流出額が大きく、地域からの漏れを防ぎ、域内循環させることが地域経済にとって重要です。トラストバンクが目指すビジョンの「自立した持続可能な地域づくり」でも大きな役割を果たします。

なぜ、エネルギーは地域経済にとって重要なのか。「えねちょ」に取り組んだ経緯や狙いを交えながら紹介します。

*卒FIT電力とは
家庭の太陽光パネルなどで作った余剰電力の「固定価格買い取り制度(FIT)」期間を終えた電力の通称。2009年から再生可能エネルギーの普及を目的に制度が始まり、10年間の満了を迎えた家庭が19年11月から出始めた。経産省によると、卒FITの家庭は21年から100万件を超え、23年までに165万件に達する見込み。

年間100億円のエネルギー費が地域外に流出? 

再生可能エネルギー(再エネ)は、政府が目指す2050年の脱炭素社会の実現のためにも注目されています。太陽光、風力、水力、木材などの自然資源やこれらの設備に必要な土地があることから、地方の再エネのポテンシャルは都市部より高いといわれています。

しかし、環境省によると、2013年時点で全国約9割の自治体のエネルギー収支が赤字。150以上の自治体で、地域内総生産の10%以上の資金流出を招いていたことがわかりました。

人口5万人規模の自治体では、年間100億円相当が地域外に流出するとも試算。大手電力会社に多くの電気代が流れ、「エネルギー費」は「通信費」の次に地域外への支出割合が大きい地域もあると指摘されています。

トラストバンクは、地域に入ってくる「ヒト」「モノ」「おカネ」「情報」を増やし、それらを地域内循環させ、地域外への漏れを防ぐ地域経済循環を軸に事業をしています。

トラストバンクが目指す地域経済循環図

ふるさと納税で都市部から地方へのおカネ(寄付金)の流れを生んでも、大量のエネルギー費として域外に流出しては意味がない。自治体内でエネルギーをつくり、地域内で循環させる「エネルギーの地産地消」が大事なのではないか。

そう考えたエネルギー事業部長(執行役員)の前田功輔さんが新規事業の社内公募で提案し、19年に部署を立ち上げました。

着想は「ふるさと納税」

エネルギー事業初の取り組みは、長崎県平戸市での風力発電事業。市が保有する風車が老朽化し、高額な撤去費用も課題となる一方、地元住民からは「地域のシンボルとして残してほしい」との声も。

そこで、19年1月にトラストバンクが無償で譲り受け、平戸の風車で作った電力を市内の公共施設に供給することで電力の地産地消に取り組みました。

トラストバンクが譲り受けた長崎県平戸市の風力発電機

平戸市での電力の地産地消には着手できたものの、全国展開するにはなかなか非現実的。

「当初、47都道府県に風力発電を1機ずつ持つ案も出ましたが、何十年かけるのかという話ですよね」(事業部長・前田さん)。

その頃、FIT制度を終えた卒FIT電力をどうするのか卒IT家庭の動向が注目されていました。新たな売電先を見つけるか自家消費する方法がありますが、前田さんは「卒FIT電力が地域に回った方が地産地消につながる」と考えました。

さらに、これまで太陽光パネルを普及するために支払われてきた自治体の補助金についても、「多いと1件あたり数十万円の補助金が出ていましたので、地域外に売電されると結果的に自治体が出した補助金が地域に還元されないことにも疑問を感じていました」。

卒FITという地域の電力を地域に還元できないかと考えたとき、「ふるさとチョイス」で培ったふるさと納税の“地域に寄付する仕組み”にヒントを得たそうです。

こうして19年9月に開設したのが、卒FIT電力を地域に寄付できるプラットフォーム「えねちょ」です。

「ふるさとエネルギーチョイス えねちょ」のトップページ

発表の記者会見では、業界初の取り組みとして多くのメディアに取材してもらいました。

2019年9月に実施した「えねちょ」のサービス発表記者会見

記者会見レポート
卒FIT電力を地域に寄附できる『ふるさとエネルギーチョイス えねちょ」の申し込み開始!(2019/10/17 | ふるさとチョイスブログ https://blog.furusato-tax.jp/?p=7394

地域新電力と共創、電力寄付にお礼の品も

「えねちょ」のスローガンは「あなたの自宅でつくられたでんきで 地域が、もっと元気に」。卒FI電力を自治体が出資する地域新電力会社に寄付して、地域内で使ってもらうことができます。全国の卒FITオーナーは誰でも利用でき、現在、9社の地域新電力が参画しています。

「えねちょ」で寄付できる地域(2021年4月時点)
・ 宮城県東松島市(東松島みらいとし機構)
・ 群馬県太田市(おおた電力)
・ 群馬県中之条町(中之条パワー)
・ 埼玉県深谷市(ふかやeパワー)
・ 千葉県銚子市(銚子電力)
・ 石川県加賀市(加賀市総合サービス)
・ 長崎県南島原市(ミナサポ)
・ 長崎県西海市(西海クリエイティブカンパニー)
・ 鹿児島県いちき串木野市(いちき串木野電力)

卒FIT電力の寄付プランは主に2つです。

1. 地域を選んで寄付する(地域新電力がある地域)
「えねちょ」に参画している地域新電力を選び、卒FIT電力を無償で寄付できます。地域によっては電力量に応じて、お肉や海産物などの特産品や地域内で使える感謝券がもらえます。

2. 地域を選ばずに寄付する(地域新電力がない地域)
地域新電力がない地域でも、トラストバンクが提携する電力会社でいったん引き受けて地域に供給。寄付した電力量に応じて厳選された地域の特産品と交換できるポイントがもらえます。

“寄付をしてお礼の品がもらえる”仕組みは、まさにふるさと納税ですよね。

寄付された卒FIT電力は、市民会館や学校、図書館、庁舎などの公共施設で使われます。自治体の電気料金の削減や使用電力の環境価値の向上、市内からの寄付であれば電力の地産地消にもつながります。

通常の卒FITとえねちょの違い

4割が「寄付に関心」

「売らずに寄付する人なんて、本当にいるの?」と思うかもしれません。

トラストバンクが卒FITオーナー約1400人に実施したアンケート調査では、卒FIT電力を売らず地域へ寄付することに「関心がある」と答えた人は、45.3%に上りました。

1kWhあたり1円~10円なら「寄付を選ぶ」人も41.3%で、高単価で売電するよりも寄付するニーズ層が一定いることがわかりました。

トラストバンクによる「卒FITに関する意識調査」( 2019年9月5日~9月6日、卒FIT電力の保有者1,432人から回答、インターネット調査)

トラストバンクは「えねちょ」で自治体や地域新電力と共創し、電力の地産地消や再エネの地域経済循環を促すだけでなく、地域と卒FITオーナーをつなぐ役割を果たしていきます。

卒FITオーナーは地域貢献しながら特産品をもらえ、自治体も特産品で地域の魅力を発信し、エネルギーを通じた交流・関係人口を築くきっかけになることが期待できます。

最近は、全国で地域新電力を設立する自治体が広がる一方、まだまだエネルギー分野に携わっている地域の人材は少ない傾向にあります。

「ふるさとチョイス」で築いた全国9割の自治体とのネットワークを通じて、自治体が地域新電力を設立するお手伝いも担い、再エネを地域経済に有効活用できる地域を増やしていきたいと考えています。

審査委コメント:卒FIT電力に地域貢献の付加価値

新エネ大賞を受賞したポイントとして「えねちょ」が卒FIT電力に「寄付」という新たな選択肢を示し、「地域貢献」の付加価値を付けたことが評価されました。

審査委員会のコメント

「卒FIT電力に対して売電以外の寄付という新たな選択肢を提供することで、寄付を通して地域に貢献するサービスである。卒FIT電力の寄付プラットフォームを構築することにより寄付された電力を自治体出資の新電力等に無償で提供し、卒FIT所有者に対しては地域の特産物やポイントで還元されるなどにより地域に貢献している。卒FIT電力に対して地域貢献という付加価値を付けたユニークな取組みとして高く評価された。今後とも事業が継続、発展していくことを期待したい」

事業部長コメント:エネルギーで地域共創を実現

■ 執行役員兼エネルギー事業部長前田功輔のコメント

「新エネ大賞で資源エネルギー庁長官賞を受賞できたこと、大変嬉しく思います。

住宅用太陽光などの卒FIT電力は、補助金などの地域支援によりその導入が加速しましたが、多くの世帯では卒FIT後の売電をどうするかの検討が進んでいなかったのが実情です。そのため、結果的に卒FITを意識せずに従来の買取先へ継続して売電するケースが多く、住宅用太陽光などの卒FIT電力は地産地消されるに至っていませんでした。

トラストバンクでは、卒FIT電力を地域へ『寄付』することができる『えねちょ』を通じて、地域に貢献したい卒FIT保有者に対して、卒FIT電力を地産地消でき、地域貢献ができる電力の『寄付』を訴求しました

現時点でまだ実績は少ないものの、地域での卒FIT電力活用が開始され、自治体公共施設での電力利用や卒FIT電力がもつ環境価値の活用などが開始されています。

今後もトラストバンクは、地産地消を推進するエネルギー事業を通じて自治体や地域電力会社と密に連携することで、地域共創を実現し、より豊かな地域社会の実現を目指してまいります

執行役員兼エネルギー事業部長・前田功輔(東京都 渋谷区出身)
大学卒業後、大手通信会社に入社。携帯電話への興味を深め、モバイル広告のベンチャーに就職した後、大手商社への転職。その後、独立・複業という形である企業の子会社経営に参画することに。地方の中小企業と仕事するなかで、感じた疑問からトラストバンクへの入社を決める。地域エネルギー事業を立ち上げ、現職。

※事業部・肩書などは公開当時のものです

<関連ページ>
・ 卒FIT電力を寄付できるサービス「えねちょ」が新エネ大賞において資源エネルギー庁長官賞を受賞(2021/01/26)

・ 卒FITにおいて 国内初の電力を寄附できる新サービス「えねちょ」を発表(2019/09/19)
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